新たな106万円の壁!?短時間労働者(パート・アルバイト)の社会保険の適用拡大

2015年も相続税をはじめとする法改正が行われましたが、
2016年も「電力の小売り自由化」や「ジュニアNISA」など家庭の資産運用に関するさまざまな取り組みがスタートします。
特に2016年10月から始まる「短時間労働者(パート・アルバイト)の社会保険の適用拡大」は開始前より大きな波紋を呼んでいます。

短時間労働者(パート・アルバイト)の社会保険の適用拡大とは?

現在のパート・アルバイト社員(短時間労働者)の社会保険加入の条件は以下の通りです。

  • 勤務先の会社が社会保険に加入している事業所(適用事業所)であること
  • 正社員の4分の3以上(週30時間以上)勤務実態があること
  • 会社が雇われた契約期間が一定期間あること

ただ、2016年10月からは「正社員の4分の3以上(週30時間以上)勤務」が、

  • 月額賃金88,000円(年収106万円)以上
  • 週20時間以上勤務

加入条件として上記2点を採用し、社会保険の適用拡大を行う予定となっています。
ただし、学生は適用除外です。
当面は上記の2点に加えて「社会保険加入者が501名以上の会社に勤務し、1年以上勤続する見込みがある者」に限定されます。
推定対象人数は25万人と発表していますが、そもそも統計データが平成22年、23年のものを使用して推計人数を出しているので
本当の人数は2016年10月に蓋を開けてみないと分かりません。

ちなみに派遣社員の方は派遣先ではなく、派遣元が社会保険加入者なので注意が必要です。
大手の派遣会社から就業している場合、派遣先は小規模でも対象に含まれる可能性があります。

“当面”と記した通り、3年以内に検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講じることになっているので予断を許さない状況です。

なぜ適用拡大が始まるのか?

そもそもなぜこの適用拡大に政府は踏み切ったのか?ということですが、

厚生労働省の2015年10月では以下のように説明されています。
被用者でありながら被用者保険の恩恵を受けられない非正規労働者に被用者保険を適用し、
 セーフティ ネットを強化することで、社会保険における「格差」を是正する。

社会保険制度における、働かない方が有利になるような仕組みを除去することで、
 特に女性の就業意欲を促進して、今後の人口減少社会に備える。

小難しくてわかりにくいですよね。。
ちょっと乱暴かもしれませんが、私なりの翻訳をすると・・

社会保険に加入すると、将来の年金に反映されることや、
 健康保険でも傷病手当金や出産手当金等など給付面のメリットがあるんだよ。社会保険ってすてき。

主婦の130万円の壁を106万円まで下げれば、もっと女性が働く時間が増えるはず!

ただ、裏を返せば「年金財政確保がそろそろ限界です。もっと働いて税金納めてよ」と政府からのSOSだと私は感じてしまいます。
※本当に私的な見解です。

この2番目の翻訳にある「130万円の壁」についてもまとめておきます。

主婦の方が気になる103万円と130万円の壁

「国民年金の加入者区分」について

そもそも社会保険の最終恩恵は年金ですよね。その国民年金には「国民年金の加入者区分」と呼ばれる、3つの区分があります。
第1号被保険者:学生、自営業者、農業や漁業に従事している方、あるいは無職の方
第2号被保険者:会社や官公庁などに勤務し、勤務先で厚生年金保険や共済組合に加入している方【サラリーマン】
第3号被保険者:厚生年金や共済年金に加入している方によって扶養されている方【いわゆるサラリーマンの主婦】

今、問題に挙げている103万円の壁は
「第3号被保険者」が扶養内で受けられる「基礎控除」+「給与所得控除」の合計額
そしてさらに高い壁である130万円の壁は
「第3号被保険者」から「第2号被保険者」へ変更される=扶養から外れてしまう行為を指します。

詳しく見ていきましょう。

103万円の壁

まず103万円の壁は扶養からは外れないので、
自分で公的医療保険や公的年金に加入する必要はありません。
しかし年収103万円以上だと所得税が発生するというものです。
65万円の給与所得控除+基礎控除が38万円=103万円なので、この壁を越えなければ所得税は0円となります。
別途住民税は支払う必要がありますが、少額のためそこまで気にする必要はないかと思います。

またもう一つのメリットとして、夫の所得税と住民税が配偶者控除によって安くなります
配偶者控除とは納税者に、無収入もしくは収入が少ない配偶者がいる場合に納税者の所得から所得税38万円、住民税33万円の控除を受けられる制度のことです。
この配偶者控除を使うためにも103万円以内に抑えたいという方も少なくありません。

130万円の壁

次に130万円の壁ですが、
「第3号被保険者」から「第2号被保険者」へ変更される=扶養から外れてしまうことです。
年収130万円以上であれば社会保険料は自己負担となります。
いわゆる130~150万円だと手取り金額が社会保険料の支払いにより目減りし、
配偶者控除の夫の社会保険料負担も控除がなくなり増加するので、
130万円以内のよりも手取りが少ない「働き損」と呼ばれる状態になりえるということです。
130万円を超えそうであれば、一気に収入を増やした方が得策といえるかもしれません。

そんな中飛び込んできた106万円の壁

このような扶養であるかどうかで大きく変わってくる社会保険の問題ですが、
年収130万円どころか年収106万円で扶養から外れてしまうというのが今回の社会保険の適用拡大です。

現在は「社会保険加入者が501名以上の会社に勤務し、1年以上勤続する見込みがある者」と限定されていますが、
3年以内に検討し、その結果に基づき必要な措置を講じるなら3年後の2019年の段階で新たな局面を見せるでしょう。

【追記】2017年4月より500人以下の会社でも労使の合意があれば拡大

2017年4月より、「社会保険加入者が501名以上の会社に勤務し、1年以上勤続する見込みがある者」と限定されていた部分が、
「500人以下でも過半数もしくは1/2以上の労使の同意があれば、申請可能」となりました。

労使の同意とは、労働者と経営者間での約束事です。
経営者からの一方的な申し入れではなく、労働者がOKと言わなければ同意とはなりません。
しかし、過半数もしくは1/2の同意があれば全員加入となります。

2019年までにはこの労使の同意の有無さえなくなってしまうかもしれませんね。

短時間労働者(パート・アルバイト)の社会保険の適用拡大まとめ

年収106万円の壁に囚われずに、130万円超の中で手取額を計算して一番良い落としどころを見つけるのがよいと思いますが、
その反面、年収106万円以内に抑えようと「日数や時間を減らしてほしい」という方も出てくると思います。

ただ、雇用する側の企業も社会保険料は折半なので、同じ金額を国に納めているということも忘れてはなりません。
もしパートやアルバイトの方がどんどん年収106万円超になり、社会保険に加入することになれば、企業側の収支も圧迫します。
そのときに耐えれるだけの体力が今の中小企業にあるのかは不安が残ります。
企業は雇用を行っているため、保険料の支払い増は雇い主としては本来は当たり前の行為といえばそれまでですが、
保険料増大のために、給料へ還元できないのであれば本末転倒です。

元々今回の改正は「年金財源確保」が一番の目的と言われます。
ただ、私たちが年金をもらえる年齢に達したときに、年金制度が機能している保障はありません。
目先の利益をとるか、将来を見通して考えるのか。
「虫の目、鳥の目」といいますが、私たちも政府も虫の目に踊らされているだけなのかもしれません。
「虫の目、鳥の目、魚の目」を掛け合わせながら、動向を見守りたいと思います。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

naoko

・合同会社BLEND 代表
・Webコンサルタント
・日本FP協会 AFP(Affiliated Financial Planner)
・キャリアコンサルタント
・投資家(株式、不動産)
福岡在住の32歳。
リクルートでの営業、やずやでの通販業務、(株)ペンシルでのコンサルティングを経験後、出産を機に退職。
子育てをしながら起業。
合同会社を設立し、IT関連の仕事をしつつ、株や不動産に投資し、資産運用に取り組み中。
現在の不労所得は月10万円